2017年6月8日
詐欺師というものは、詐欺に引っかかる人しか狙いません。そして、詐欺に引っかかる人というのは、同じ手口に何度でも引っかかってしまう人たちなのです。
そのことを詐欺師たちは知っています。そこで私は策をめぐらしました。
だったら、もう一度、だまされてみようじゃないか。
私は依頼人のAさんに言いました。
「じゃあ、ダイヤモンドの結婚指輪を彼女に渡したいって、紹介者のBさんに言ってみましょうか。もしかしたら、婚約者が見つかるかもしれませんよ」
「そんなお金もうありません」
というAさんをなだめて、計画を実行しました。
数日後、依頼人Aさんが
「Bさんが彼女を見つけてくれました!」
と喜びの電話をしてきました。
Bさんは彼女とは連絡できなかったんじゃなかったの?
雲隠れしていた婚約者がダイヤの結婚指輪と聞いてヒョコヒョコ出てくるのはおかしいんじゃないの?
そんな疑問は、依頼人Aさんの脳裏にはいっさいよぎりません。結婚式をキャンセルしなくてよかったと、ホッとしているぐらいなのです。
その後、Aさんは現れた婚約者と再会しましたが、ダイヤの指輪を渡すこともなく、私の仲介で婚約は破棄されました。
紹介者のBさんと、その共犯の彼女を刑事訴訟に持っていくか、民事ですませるのか、それはケース・バイ・ケースですが、とりあえずここでは、依頼人Aさんのこれ以上の被害を防ぐことができました。
ちなみに、Aさんが結婚詐欺に遭ったと自覚できたのは、それからもう少し時間が経ってからのことでした。