支払いをごまかす人たち ①

借金回収ができた場合の成功報酬

「貸した金を回収してほしい」という依頼も探偵のところにはよく舞い込みます。

その場合の探偵費用はすべて成功報酬です。お金を回収できれば大きな報酬を得ることができますが、回収できなかった場合は調査に費やした実費のみしか請求することができません。

たとえば、１億円を貸した人物が亡くなってしまい、貸したお金をその未亡人から回収してほしいという依頼があるとします。
こうした依頼はたいてい、弁護士を立てて交渉したものの、相手の「返したくてもお金がないのよ」の一点張りにあい、らちがあかないので探偵に頼み込んでくるという場合が多く、そのため弁護士からの紹介ということになります。

そうした場合、仮に１億円を回収できた場合は、若干の着手金に加えて、弁護士の得る成功報酬の半分の８％、800万円が私の取り分となります。
もちろん、弁護士からもらうわけでなく、依頼人が支払わなければなりません。

弁護士は裁判を起こしても回収できないと見込んだから探偵の私を依頼人に紹介したわけです。

そこで探偵の私の出番となるのですが、話を聞いてみて、これは簡単に１億円を見つけられそうだと私は踏みました。

調査方法はこうです。
まず、借金を返そうとしない未亡人の尾行を行い、金融機関に立ち寄るのを確認し、その取引状況を確認します。
昔は、すぐにすべての貯金残高が判明できたものですが、現在は個人情報保護法によってそれはできません。
そこで特別な手法を用いて銀行口座の状況を把握しますが、このケースではどの口座にもお金は残っていませんでした。

しかし、故人はたくさんの保険に入っていたので、その死亡保険金が未亡人に支払われているはずです。
そのお金がどこかにあるはずなのです。

そんなとき、未亡人宅で情報収集していた調査員が報告してきました。

「所長、この音声を聞いてください。暗号か何かでしょうか？」